白内障、緑内障、加齢黄斑変性症…目に効く栄養素・食べ物は
目の健康には、食生活、食習慣も大切
ここでは、目の健康を保つに必要な栄養素、ビタミンA、ビタミンB群(ビタミンB1やB2、B6、B12)、ビタミンC、亜鉛、ビタミンEについて、その働きと、どんな食材に栄養素がどれくらい含まれ、どれくらい摂取すればよいのかを紹介します。
角膜や網膜などの新陳代謝を良くする ビタミンA(脂溶性ビタミン)
ビタミンAは、目をはじめ、皮膚、鼻、のど、肺、消化器などの粘膜の新陳代謝を促し、健康な状態に保つ働きがあります。とくに目では、ビタミンAは重要な役割があります。角膜や網膜の働きを助け、細胞や粘膜の新陳代謝、涙の量を一定に保つ役割があるのです。角膜の保護や透明度を維持するためにもビタミンAは欠かせません。
また注目したいのが、目の網膜にあるロドプシンという色素の主成分がビタミンAであることです。ロドプシンは、目が光を感じるためにはなくてはならない働きを担っています。そのため、ビタミンAが極端に不足すると夜盲症(やもうしょう)を引き起こすことがあります。
《夜盲症とは?》
暗い場所にいても、しばらくすると目が慣れ、見えるようになります。しかし、網膜の反応が悪いと、目が慣れず、いつまでも見えにくい状態が続きます。これを夜盲症といいます。網膜にあるロドプシンという物質は、暗所でのわずかな光に反応し分解されます。その刺激が脳に伝わることで、暗い所でも物が見えようになる暗順応がおこるのです。ビタミンAはこのロドプシンの素材の一つになるので、ビタミンAが不足することでロドプシンも必然的に少なくなり、暗順応ができない夜盲症がおこるというわけです。
二つ目が、抗酸化作用です。ビタミンAには強い抗酸化作用があり、酸化による細胞の老化を抑える働きがあります。
人間の身体は、活性酸素や紫外線、排気ガスなどの有害物質により細胞が酸化されると老化がすすみます。
白内障、緑内障、加齢黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)のいずれも、発症と進行には加齢、つまり身体の老化が影響しているのです。
こうした老化現象自体は誰にでも起こるのですが、すでになんらかの目の病気が起こっている場合、その進行を少しでも防ぐには、老化の速度を遅らせることが大切です。
それには、体内の酸化を防ぐ抗酸化作用をもつ栄養素が役立つのです。抗酸化成分を摂取すると、それらが身代わりになって細胞が酸化されるのを防いでくれます。
ビタミンAを効率良く摂取するには、動物性食品に含まれているレチノールをとるのがおすすめです。レチシノールは鶏や豚のレバー、うなぎなどに多く含まれています。
《レチノールとは》
ビタミンAは、化学的にはレチノイドと呼ばれています。レチノール、レチナール、レチノイン酸の総称をビタミンAとして、脂溶性ビタミンに分類されています。脂溶性ビタミンは、水に溶けず、脂に溶けやすい性質をもっているビタミンをさします。
体内でビタミンAに変わる βカロテン
βカロテンは、ニンジンやカボチャなど色の濃い緑黄色野菜に多く含まれています。体内で必要な量だけがビタミンAに変換され、体内の活性酸素を除去し(抗酸化作用)、免疫力を高める(免疫賦活作用)のです。動脈硬化を防ぎ、心臓病を予防すると考えられています。熱に強く、油に溶けやすいので、野菜を油で調理すると吸収率が高まります。1日当たりの摂取目安量にβ-カロテンが1620~7200μg含まれている食品には「保健機能食品」(栄養機能食品)の表示が認められています。
ビタミンAは脂溶性ビタミンのため体内にとどまる性質があり、摂り過ぎると吐き気や疲労感をもたらすこともあるので、過剰摂取しないようにしましよう。過剰摂取の心配がないのがβカロテンです。βカロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換され、過剰摂取の不安がなく安心です。
《脂溶性ビタミンとは》
ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあります。水溶性ビタミンは水に溶けやすい性質を持つもので、ビタミンB群及びビタミンCなどがこれに当たります。いっぽう、脂溶性ビタミンは水に溶けにくく油に溶けやすいもので、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがこれに当たります。
ビタミンB群(水溶性ビタミン)
- 眼睛疲労や視力低下に……ビタミンB1
- 疲れ目による目の充血や視力維持に……ビタミンB2
- 眼睛疲労や、目の炎症を防ぐ……ビタミンB6
- 視覚情報をスムーズに伝える……ビタミンB12
ビタミンB1やB2、B12などのB群もまた、目の機能を正常に保つには欠かせない栄養成分です。
ビタミンB群は水溶性ビタミンです。これらは体内にとどめておけないため、一度に大量に摂取しても、使われなかった分は排出されてしまいます。それだけに、不足なく、また無駄な排出を防ぐには、食事のたびにこまめにとることが大切です。水に溶け出す性質があるので、ゴシゴシ洗ったり、ゆで汁を捨てる調理などは避けましょう。
●ビタミンB1
ビタミンB1は、糖質をエネルギに変換するときに不可欠で、眼精疲労の予防に役立ちます。仕事で1日中パソコンを見るなど、目を酷使している人は不足しないようにしましょう。
●ビタミンB2
ビタミンB2もまた、たんぱく質や糖質をエネルギーに変える際に必須ですが、ほかにも皮膚や粘膜を健康に保つ働きがあります。目が充血する、目の乾燥がきになるという人は、意識して摂ることが大切です。
●ビタミンB6
ビタミンB6は、たんぱく質を利用する際に使われるため、不足すると皮膚や粘膜の新陳代謝に影響します。
●ビタミンB12
ビタミンB12もB6と同様の働きをするほか、神経機能を維持する役割もあります。
白内障予防に効果的な ビタミンC(水溶性ビタミン)
白内障は、老化により目の水晶体が白く濁ることで起こります。透明度だけでなく、弾力性も失われてピント調節にうまく対応できず、ものが見えにくくなります。一度濁った水晶体は、元に戻すことができませんが、酸化を抑えることで進行を遅らせることはできます。そのためには、ビタミンCの摂取がすすめられています。
ビタミンCは抗酸化ビタミンと呼ばれ、活性酸素の害から細胞を守る働きがあります。
また、ビタミンCにはコラーゲンを合成する働きもあり、血管や皮膚、粘膜強化に役立つため、目の粘膜を健康に保つためにも有効です。
加齢黄斑変性症を予防・改善 亜鉛
加齢黄斑変性症のある人は、活性酸素から細胞を守ることが大切。そのために抗酸化ビタミン(ビタミンE、ビタミンC、βカロテンなど)とあわせて摂りたいのが亜鉛です。
人の体にはもともと、活性酸素を除去する働きを持つSOD(スーパー・オキシド・ディスムターゼ)という酵素があります。亜鉛はその構成成分です。
アメリカの疫学調査では、亜鉛と抗酸化ビタミンを一緒に摂ったところ、加齢黄斑変性症の前駆病変からの発症率を抑えられたことが明らかになっています。また、ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、亜鉛などを含んだサプリメントを飲むと加齢黄斑変性の発症が少なくなることが分かっているといわれています。
活性酸素の攻撃から体を守る抗酸化成分 ビタミンE
ビタミンは水溶性と脂溶性に分けられますが、ビタミンEは脂溶性ビタミンに分類されます。天然の4種類のトコフェロールと4種類のトコトリエノールの合計8種類の物質の総称です。私たちは生命維持に必要なエネルギーを得るため絶えず酸素を消費していますが、これらの酸素の一部は、代謝過程において活性酸素と呼ばれる反応性が高い状態に変換されることがあります。活性酸素はがんや生活習慣病、老化等、さまざまな病気の原因であるといわれています。白内障、緑内障、加齢黄斑変性症の原因のひとつが活性酸素です。ビタミンEはこの活性酸素の攻撃から体を守る働きがあります。このような働きのことを抗酸化力と呼んでいるのです。抗酸化成分のひとつがビタミンEで、ビタミンA・Cなどがあります。
●がん・生活習慣病の予防に効果
抗酸化成分は、様々な酸化ストレスから体を守る効果があることから、前立腺がん、胃がんや食道がんの予防に効果的であることが分かっています。また、すでに罹患した胃がんの進行を遅くする効果があることも報告されています。また、ビタミンEは脳卒中予防にも効果があるといわれています。血管の細胞膜のダメージを防ぎ、血管の健康を保つことで動脈硬化を防ぎます。心臓病の一次予防に対しても、ビタミンEの有効性が示唆されています。また、アルツハイマー病などの認知症の予防効果があることも知られています。
●ビタミンCと同時摂取でより効果
ビタミンEを多く含む食材はひまわり油などの植物油の他、アーモンドや落花生などがあげられます。野菜ではほうれん草やかぼちゃなどにも含まれています。日本人の食事摂取基準によりますと、成人の1日の摂取目安量は6.0~6.5mgです。これは1日当たりの摂取量をもとに決められた値ですので実際の必要量はこれよりも多いと考えられます。
ビタミンEは栄養機能食品としても表示許可されています。許可要件として1日あたりの上限値は150mg、下限値は2.4mgです。栄養機能表示は「ビタミンEは、抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける栄養素です」です。
目に良いと話題の アントシアニン・ルティン
カシスがピントフリーズ現象を改善
●抗酸化作用が高いアントシアニン
目に良い食材として、注目が高いブルーベリー。ブルーベリーの青紫色が目にいいとされ、これは「アントシアニン色素」というフラボノイド一種。フラボノイドには、抗酸化作用があります。老化に関わる白内障や加齢黄斑変性症(かれいおうはんへんせいしょう)などの発症リスクを減らす役割をします。欧米では高齢者の視力低下の第一位の病気になっているのが加齢黄斑変性症です。日本でも増加して問題になっています。
このブルーベリーと並んでアントシアニンが豊富な果物に「カシス」があります。このカシスアントシアニン(カシスに含まれるアントシニアン)」には、「ピントフリーズ現象」を改善するはたらきがあります。これは、眼精疲労の改善を示すもので、現在目に良いとうたわれているブルーベリーにはない、注目すべき効用です。
また抹消血流を活発にさせるはたらきにより、筋肉のコリをほぐす効用も確認されています。とくに目や腰に対しては、摂取することでパソコン使用後の疲労具合を軽減させることが明らかになっています。
また、アントシアニンが一般栽培種のブルーベリーに比べて2~5倍多く含まれているといわれているのが「ビルベリー」です。
アントシアニンは、視力を高める働きがあることもよく知られています。暗闇での視力「夜間視力」や、暗闇で目を順応させる「暗順応」(あんじゅんのう)を高めたり、網膜の機能を高める作用もあるとされています。
これは網膜にあるロドプシンという赤いたんぱく質とかかわりがあります。ロドプシンは目に入った光を信号に変え、その信号が脳に伝わることにより光の明暗がわかるようになります。アントシアニンは、ロドプシンの再生を助ける働きをすることから、視力の低下を防ぎ、目の疲れや視力回復にいいといわれているのです。
●視力低下の予防効果も期待できるルティン
「ルティン」は、カロテノイドという野菜や果物、海草などの食品に含まれる色素の一種。黄色や赤などの色素の構成成分で、抗酸化作用や抗がん作用も報告されています。
ルティンは、人間の体内で目の網膜だけに含まれています。とくに、視力を出す中心網膜を守る色素で「黄斑」にルティンが多く、紫外線から黄斑部を守り、また近視性黄斑変性症、高齢になった時の加齢性黄斑変性症などの病気予防に効果的です。
ルティンはほうれん草やブロッコリーに豊富に含まれています。
筋肉の働きを円滑にするカルシウム
カルシウムも積極的に摂取したい栄養素です。というのは、体内でカルシウムが欠乏すると、毛様体筋の働きが鈍くなり、視力低下を起こすといわれているからです。
目の健康のために、食事にも気配りを。
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