まぶたが腫れている、まぶたが痛い・かゆい、目がゴロゴロする…それはものもらいかも?
まつげの毛根や、その側にある汗を出す汗腺(かんせん)、脂を分泌するマイボーム腺に起こる異常のことを一般的に「ものもらい」と呼んでいます。ものもらいは、大きく分けて「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」と「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」があり、原因や治療方法が異なります。
「ものもらい」の原因は?
麦粒腫は、原因は細菌感染によるものです。汗を出す腺や、まつげの毛根に感染した場合を「外麦粒腫」、マイボーム腺の感染を「内麦粒腫」と呼びます。
マイボーム腺は、目のまわりのまつ毛の内側に上下60個くらいもある腺です。油を分泌して、涙が蒸発するのを防いでいます。マイボーム腺の開口部が目のふちのところにほぼ一直線に並んでいるのですが、鏡で見ても肉眼で見分けるのはちょっと難しい。油(脂質)を分泌していて、この油がまばたきで涙の表面にひろがり、涙が蒸発するのを防いでくれています。
「霰粒腫」は、マイボーム腺という皮脂腺が詰まることにより、中に分泌物がたまってしまい、その刺激でまぶたにしこりのような塊ができます。麦粒腫とは異なり細菌感染によるものではありませんが、時に炎症が起こり急性化膿性霰粒腫へと変化することがあります。急性化膿性霰粒腫の場合は、赤みや痛みや目やになど麦粒腫と似た症状が起こることもあります。
マイボーム腺が詰まると、涙の表面に蒸発を防ぐための油の膜がきちんとできません。それだけ涙が乾きやすくなり、ドライアイの重要な原因の1つと考えられているのです。
一般的に麦粒腫や霰粒腫は、目をこすったり、まぶたをよく触る人に起こりやすいといわれています。また、霰粒腫は目の血液循環がわるいことが大きく影響しています。甘いもの、脂っこいもの、カフェイン飲料やアルコール飲料が好きな人にできやすい傾向があります。甘いもの、脂っこいもの、カフェイン飲料などは、血液を濃くどろどろにして血液循環を悪くします。血液循環が悪くなると脂肪がうまく分泌されず、マイボーム線がつまり霰粒腫になります。
これまでドライアイになるのは、涙の分泌が少ないことが主な原因だと考えられてきました。ところが最近の研究では、涙の分泌が少ないのは1割ほどとされているのです。
では何が原因なのか?
角膜の表面を覆っている涙は単なる水ではなく「油層」「水/ムチン層」の2層構造になっているのです。外側にある「油層」が涙の蒸発を抑え、内側の「水/ムチン層」は涙が流れ落ちないようにする役割を果たしています。これによって常に角膜が涙で覆われているというわけです。これでわかる通り、涙の「油層」成分がとても重要です。この油の成分を出すまぶたの「マイボーム腺」の異常が、ドライアイの原因の8割のようです。角膜を覆う十分な油の供給が少なくなると、すぐに角膜が乾燥してしまうのです。
「ものもらい」の症状は?
麦粒腫の場合は、初めはまぶたに局所的な赤みが出て、しばしば軽度の痛みや痒みを伴います。炎症が強くなってくると、赤み・腫れ・痛みが強くなります。化膿が進むと、腫れた部分が自然に破れて膿が出ることがあります。膿が出てしまえば、その後症状は回復に向かいます。
霰粒腫の場合は、まつげの生え際あたりがはれます。痛みはほとんどなく、しこりのような肉芽(にくが)が詰まっているのでゴロゴロします。
また、急性化膿性霰粒腫という炎症をともなうタイプは、麦粒腫と同様の症状がでます。一般的に、患部を押して痛む場合は麦粒腫が疑われ、痛みを感じない場合は霰粒腫が疑われます。
「ものもらい」の治療方法は?
麦粒腫の場合は、抗菌の軟膏または点眼による治療が主になります。「発赤期」と呼ばれる初期段階には、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などに効果のある抗菌薬の内服、点眼療法を行います。これらの抗菌薬と抗炎症薬の内服と、点眼療法を行うことで一般的には1週間程度でほぼ完治すると考えて良いでしょう。症状が悪化して、腫れや傷みがひどい時には、膿瘍部を切開する場合もあります。その場合は治癒に、1~2週間くらいかかります。
霰粒腫の場合は、放置していても改善するケースが多いとされています。ただし、炎症が強い場合や感染の合併がある場合は、非ステロイド系・ステロイドの抗炎症剤、抗生物質を内服(または点眼)することで治療する場合もあります。内容物の周りに袋が形成され、内容物が硬くなった場合は、自然治癒を期待できなくなり、この場合はまぶたを切開して取り除くこともあります。
麦粒腫も霰粒腫も、人にうつることがないので、眼帯をする必要はありません。コンタクトは、治療中に装用すると患部を刺激する可能性があり、治ってから使うようにします。
女性のメークは、ものもらいの原因になる?!
「霰粒腫」(さんりゅうしゅ)は、マイボーム腺という皮脂腺が詰まることにより、中に分泌物がたまってしまい、その刺激でまぶたにしこりのような塊ができる……と書きましたが、女性の場合、メークでもマイボーム腺をふさぎがちです。
例えば、アイメークの濃い女性は、まつ毛の内側の粘膜に濃いアイラインを引いたりします。目がパッチリと見えます。しかし、この粘膜にある小さい穴こそが、マイボーム腺なのです。アイラインが、マイボーム腺の開口部をふさぐメークになっているんです。アイライナーにかぎらず、マスカラやアイシャドウなども、目の際までつけるとマイボーム腺の機能を侵す原因になります。
毎回、洗顔で丁寧に落とせばよいのですが、問題は落としきれないメークがマイボーム腺の詰まりの原因になること。この腺が詰まると、異物感や不快感の原因になり、さらに感染すれば炎症が起こり、ものもらい「霰粒腫」の原因にもなるのです。
このマイボーム腺や涙腺の詰まりをとり、ドライアイや疲れ目軽減の対策としてオススメなのが「目を温める」ことです。「目を温める」ことは、局所の血管拡張、血液やリンパ液の循環促進、細胞の新陳代謝などに作用します。
【涙腺・マイボーム腺のケア方法】
手軽な方法として、入浴時、タオルを湯に浸して絞り、天井に向けた目に載せて、閉じたまぶたの上から3分ほど、温めるとよいでしょう。マイボーム腺に固まった脂は、約40度C(お風呂の温度)で溶けるといわれています。
入浴時以外では、ホットタオルがオススメ。目の上にのせるだけで、簡単にケアができます。
………ホットタオルの作り方………
- タオルを水で濡らして軽くしぼり、ラップで包みます。
- 500~600Wの電子レンジで1分~2分程度温めます。
- 温めたタオルを、ラップをつけたまま、乾いた布で巻いてできあがり。
疲れ目軽減で目を温める場合は、約10分温めることで、目の見え方を調整する毛様体筋のこりがほぐれ、目のピント調節力が改善され、疲れ目も緩和されます。
霰粒腫の詰まりをなくすには、入浴時に蒸しタオルで温めるとよい。
《補足》
ちなみに、人間の脂肪は通常35℃で融けます。人間の体温は35.6℃ですから、通常脂肪が固まることはありません。しかし、食事がかたよると脂肪の質が変化し融点が上昇。また、甘いものや脂っこいものを多く食べると、脂肪の分泌が増加し、細い管からの排出がうまくいかなくなり、滞っているうちに脂肪が外気温で冷やされ固まってつまることになるのです。
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